思考を止滅させること
先日、ある生徒さんとお話ししていたところ、ヨガをしている時の《脳の状態》の話になりました。
もちろん、筋肉を動かすことで体は動くのですが、その指令を司る脳。
アシュタンガヨガは《動く瞑想》と言われていますし、
ヨガの経典には、《ヨガとは思考を止滅させること》と記載されています。
そんなお話をしていたところ、その生徒さんが教えてくれたのが、剣の達人、宮本武蔵にまつわる下記のお話です。
ある日、武蔵が剣の達人である柳生石舟斎に斬りかかっていきますが、石舟斎は武蔵を手ではたき、武蔵は道場に転がってしまいます。その時、柳生石舟斎はこう言ったといいます。「武蔵よ、鳥の鳴き声が聞こえていたか?」
『勝つことだけを考え、おのれにとらわれていた武蔵には、無論、外の世界は見えず、鳥の声にも気がつかなかった』という逸話です。
わたしの《ZONE》体験
この話を聞き、自分の体験談で恐縮ですが、同じような経験を、練習中に体験したことがあるのだと、その方にお話ししました。皆さんにも似たような体験があるかもしれません。
それは、苦手なアーサナが初めてできた日なので、とても鮮明に記憶に残っています。その日は何の躊躇いもなく、落ち着いていて、初夏に入るというのに、観音山のスタジオの外では、ウグイスが鳴いていたのです。
私はその、お喋りなホーホケキョの鳴き声を楽しみながら、スローモーションのように動いていました。一瞬の出来事なのに、時間の流れが止まったようでいて、五感は極めてクリア。自分を取り囲む全ての方向、360度を感知できるような感覚でした。
後から思えばあれは、アスリートの方々の言う《ゾーン》に入った脳の状態だったと思います。
年に何度もありませんが、たまにそれはやってきます。素晴らしい体験です。
それが、成功体験となり、どうしてもできないアーサナ、気持ちが良くないと感じる時は、スタジオの外の音に耳を澄ませてみます。心が落ち着くのです。全注意力を思考が司っていると、そこら中にあるのに見えない、聞こえないことがたくさんあるのです。
《集中》にもいろいろある
あた、こんな経験はありませんか?
マットが敷き詰められていてぎゅうぎゅうのスタジオ。
あなたは、一生懸命に練習しています。集中しているので周りは見えていませんが、誰ともぶつかることがない。
それは、お隣りのベテランの方が、同じく集中して練習しているにもかかわらず、あなたの次に行うアーサナを知っていて、何の思考も働かせずに、ぶつからないように避けているからではないですか?
また、マイソール高崎では、ブロック練習をする方もいるので、「後ろの壁に行きたい」という方がいるとき、指示がなくても、ふと気づいて場所を入れ替わってくれたりすることがありませんか?
どちらも《集中》しているのです。
でも、《意識がどこに向かって集中しているか》が決定的に違います。
鳥の声も、風の音も、自然のなかにいつも存在します。
何かに迷ったり、つまづいたら、自然の中に出かけてみると良いですよ。
ヨガのことも、生き方も。
皆さんも、次の練習では、脳内の動きを自分で測ってみると面白いかもしれませんね。
concentrate on your mind ❤︎masami